World Surf League (WSL) 2021シーズンの開幕イベントとなるWomen’s Championship Tour #1『Maui Pro presented by ROXY(マウイ・プロ・プレゼンテッド・バイ・ロキシー)』。新型コロナウイルスによるパンデミックで2020シーズンのイベントをすべてキャンセルとしたWSL。未だ収束とは程遠い状況ですが、7月に発表された2021シーズンのスケジュールと新フォーマットのもといくつかのカウントダウンイベントを経て、いよいよツアーをスタートしました。
しかし、大会2日目の早朝、会場であるマウイ島ホノルア・ベイでシャークアタックが発生。翌日残念ながら被害にあったサーファーが亡くなったことを受け、WSLは被害者の方への追悼と共に同会場でのイベント続行は困難であると判断。会場の移動を検討しQFヒート3までを終えた時点での休止を発表しました。
さらに、オアフ島ノースショアで同時開催されていたMen’s CTの開幕戦『Billabong Pipe Masters』ではWSLのCEO Erik Logan(エリック・ローガン)を含むスタッフ内に新型コロナウイルスの陽性が認められ、出場者及び全関係者の安全確保を重視しこちらもトライアルの2戦と本戦初日を終えた時点でイベントを休止する事態に。大変な幕開けとなりました。
事態に進展があったのは17日、まずはMen’sディヴィジョン『Billabong Pipe Masters』が再開。そして予定される最終日にWomen’sを『Maui Pro presented by ROXY at Pipeline』として同時開催することを発表。
Two-time WSL Champion Tyler Wright of Australia is the winner of the Maui Pro presented by ROXY at Pipeline after taking victory in the final
Photo by Tony Heff/World Surf League via Getty Images
Women’s CTのパイプライン開催は史上初。
その一戦を勝利したのはオーストラリアのTyler Wright(タイラー・ライト)でした。2018シーズン途中でインフルエンザにかかり、その後その後遺症に苦しみツアーを離脱。結果約1年半もの長期休養を余儀なくされ、復帰を果たしたのが2019シーズン最終戦のマウイでした。そこでブランクを感じさせないパワフルなライディングで見事ファイナルまで進出。優勝こそ逃したものの2位という好成績で完全復活をアピールしました。
そして全イベントがキャンセルとなった2020シーズンを経て迎えた開幕戦の舞台もそのマウイ島 ホノルア・ベイでスタート。QFでは19年に決勝で破れたStephanie Gilmore(ステファニー・ギルモア)に対し10.00ポイントライドを含む18.33で完勝。その後先述のアクシデントにより舞台をパイプラインに移し再開しますが、バックドアがメインの癖のあるコンディションに苦戦する選手が多い中でもその実力と強さを発揮。ファイナルでは地元ハワイのCarissa Moore(カリッサ・ムーア)に対し残り1分でのラストライドで勝利。自身3度めのワールドタイトル獲得へ向け好発進をきりました。
Two-time WSL Champion Tyler Wright of Australia is the winner of the Maui Pro presented by ROXY at Pipeline after taking victory in the final
Photo by Keoki Saguibo/World Surf League via Getty Images
CHECK! それでは2021 WCT開幕戦勝者Tyler Wrightの愛用ギアをチェックしていきます。
🏆 Winner’s Gear: Tyler Wright‘s gear at Maui Pro presented by ROXY at Pipeline
☑︎ Surfboards:サーフボード
“Radius”|Pyzel Surfboards|Shaped by Jon Pyzel
サーフボードはJon Pyzel(ジョン・パイゼル)の代表的モデル”Bastard”の後継モデル“Raius”のラウンドテール。ディメンションは5’9”
Radiusはスピードとルース性と言う相反する性質を両立させるためスムーズな全体のミディアム/ハイロッカーとシングルコンケイブ新たに設計し、さらなるフローとドライブそしてクイックターンと高速スピード性能を達成しました。
原型のBASTARDに比べ大きな特徴のやや強めのテールロッカーは、ドライブを高めながら高反応スナップとイージーなボトムからのストレートアップを実現しトップアクションをより簡単に可能にさせます。ビーチブレイク、リーフポイントブレイクそしてアウターリーフとすべてにその高性能はワールドチャンピオン ジョンジョンや名だたるTOPライダーによって既に証明されています。あなたにとってこのボードは最高のサーフィンを与えサーファー人生最高のエクスペリエンスを提供します。
Radiusは初心者や中級者にとっては最高の選択肢ではありませんが、それに合ったボリュームを持たせれば、あなたのサーフィンをさらに高めネクストレベルにこのボードがあなたを確実に導いてくれます。Pyzelsurfboards Japanディスクリプションより
☑︎ Fins:フィン
“Filipe Toledo Tri Fins|FCS
フィンはFCS (エフシーエス)のアスリート・シグネチャー・シリーズ“Filipe Toledo Tri Fins”を使用。最軽量エアコアを採用しアップデイトされたFCS2の最軽量PCモデル。スピード、フロー、レスポンスとコントロール性に優れたFCSの「Accelerator」ファミリーのモデルです
☑︎ Traction Pad:デッキパッド
“Tyler Wright Pad” |Ocean & Earth
トラクションパッドは、Ocean&Earth(オーシャン・アンド・アース)からリリースされている自身のシグネチャー3ピースモデル“Tyler Wright Pad”を使用。高密度EVAがインサートされたパワーキックとウォータープルーフ対応で超薄型・超軽量マテリアルが特徴。
☑︎ Leash:リーシュコード
“Comp Leash” |Ocean&Earth
リーシュコードも同じくOcean&Earthの“Comp Leash”を使用。レールのグラフィック、パッド、リーシュとプルーで統一したセレクトでした。
☑︎ Wetsuits&Apparel:ウェットスーツ&アパレル
“Tallows Fixed Tri Bikini” |Rip Curl
ウェットスーツ&ウェアはRip Curl(リップカール)に所属。今大会の着用モデルは“Tallows Fixed Tri Bikini”。最終日のPipelineでは“Golden Days 5″ Boardshort”を合わせていました。
そのほか、今季開幕に際しTyler Wrightが着用するジャージが話題になりました。現在WSLのアスリートジャージには背番号と名前、両肩に出身国国旗がプリントされていますが、Tyler Wrightのジャージにはオーストラリア国旗とプログレス・プライド・フラッグがプリントされています。
アメリカのグラフィックデザイナーDaniel Quasar(ダニエル・クエイサー)が2018年に考案したこのシンボルは、古くからLGBTコミュニティの象徴とされてきたレインボーにトランス・プライド・フラッグを加え、性的マイノリティの多様性、トランスジェンダー、そして有色人種の全ての包摂を目的に可視化したもの。
Tyler Wrightは昨季のマウイで長期療養と復帰を支えてくれた当時のパートナーの女性の事をメディアに語っていたほか、歴史的な出来事として記憶に新しいBLMを通じた人種差別撤廃も積極的にアピールしてきました。今回もWSLという多大な影響力を持ち常に先進的活動を行う世界的スポーツリーグを舞台に、メインスポンサーのRoxyをはじめ多くの協力のもとでこうした取り組みがされたことはとても素晴らしい事だとおもいます。
加えて、今季から新たにナンバーを『23』に(13から)変更したTyler Wright。SNSなどで今季は自らのプログレス(進化・発展)の年であることも語っていました。
Progress Pride Flag
Daniel Quasar/ Facebook